2022年10月31日
2022年09月19日
所得税法の通達の改正案が国税庁より発表されています。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=410040064
この通達の改正案は副業を行っている人にとっては大きな改正となります。
改正案のため、本当に改正されるかどうかはまだ不明ですが、改正された場合、令和4年分の所得税から適用となるため、来年の申告には影響してきます。
どのような改正なのか解説していきます。
今回の改正案では事業所得と雑所得の線引きが明確となります。
まず、そもそもの所得税の解説になりますが、所得税法上、個人の収入を下記の10種類に区分しており、それぞれの収入で取り扱いが異なります。
なぜ収入によって取り扱いを分けているかと言いますと、例えば事業所得や給与所得などは病気などの突発的なことが起こらない限り来年以降も収入を得られますが、退職金や不動産の売却による収入などは長年の勤務などによるものであり、来年以降は収入が見込まれないものであるため、同一に取り扱うことは不適当だからです。
今回の改正では事業所得と雑所得に関係するものであるため、この2点について見ていきましょう。
まず、事業所得についてですが、国税庁のHPによると
事業所得
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得をいいます。
ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は、原則として不動産所得や山林所得になります。
とあります。ここでの事業とは、独立・継続・反復して行われる仕事のことを言います。
要は繰り返し仕事として行われる必要があるため、年間数回だけ商品を仕入れて販売するような場合や、家庭用の動産などを売却した場合などは、『事業』として認められません。
また、事業として認められるにはそれ相応の時間や労力を費やす必要があります。
次に雑所得についてですが、こちらも国税庁のHPによると
雑所得
雑所得とは、上記利子所得から一時所得までの所得のいずれにも該当しない所得をいいます。
例えば次に掲げるようなものに係る所得が該当します。
(1)公的年金等
(2)非営業用貸金の利子
(3)副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)
とあります。ほかの所得のいずれにも該当しないものを雑所得としているため、消去法的に残るものが雑所得に該当します。
説明の中に『副業に係る所得』とあるため、サラリーマンが行う副業は全て雑所得になると思うかもしれませんが、先ほどの事業所得で説明したように独立・継続・反復して行っているものは事業所得となるため、相応の規模で行っている副業については『事業所得』として取り扱う可能性があります。
今まで、この線引きが曖昧であったため、今回の改正でその部分を明確にしようという狙いがあります。
事業所得と雑所得の定義は上記の通りですが、では所得税法上、取り扱いがどう異なるのか見ていきます。
1.青色申告が事業所得では使える
事業所得に分類されるものについては税務署に事前に承認申請書を提出し、帳簿を作成することなどにより、青色申告での申告をすることができます。
青色申告を使う場合下記のメリットがあります。
① 青色申告特別控除が使える
事業所得を青色申告している場合、青色申告控除というものが使えます。
これは事業で出た所得から55万円(電子申告をしている場合は65万円)を控除することができる仕組みとなっています。少し語弊がある表現かもしれませんが、実際には使っていない経費を55万、65万使用したとみなして所得を計算できるということです。
現在の所得税・住民税合計での最高税率は55%ですので、人によっては青色申告控除を使うことによって約35万、税金を安くすることが出来ます。
② 損失の繰り越しが可能
青色申告をしている場合、最大3年間、純損失(赤字)の繰り越しが可能です。
例えば、今年100万円赤字が出て、その翌年は200万円の黒字となった場合には前年の100万円と相殺して、今年の所得を100万円とすることが可能です。
2.事業所得でマイナスが出た場合、給与所得などと損益通算ができる。
純損失の繰り越しと似ていますが、事業所得が赤字で、その年に他の会社からもらった給与などがある場合には、その赤字は給与所得から差し引くことができます。
以上の2点が代表的な違いとなります。
雑所得については上記の特典は使えませんので、青色申告特別控除を使うことができないため、出た所得に対して丸々税金がかかることとなりますし、仮に赤字となってしまった場合でも損失の繰り越しもできなければ、他の所得との損益通算も認められません。
今回の改正案では、事業所得・雑所得の区分を明確にするために、特別な事情が無い限りは
収入金額(≒売上)が300万円以下の場合には雑所得とする。
という取扱いとなっています。
今まで副業を事業所得かつ青色申告で申告を行っていた方については収入がそれだけなければ、事業所得として認められないため、青色申告特別控除を使うことができなくなります。
そういった方には今回の改正案は『増税』に働きます。
なお、その業務がその人の主たる所得の場合には雑所得とはしませんので、その業務しか収入が無い人については売上が300万円以下であっても、事業所得として取り扱います。
以上の様に、副業を今まで事業所得として申告していた人については、この改正案は大きなものになるため、今後改正案が通るかどうか注意しなければなりません。
個人的には、収入金額で事業所得か雑所得かを判断するのは少しどうかなあと感じています。
例えば物を仕入れて販売するような業態では比較的売上を作りやすい(極端な例では、300万円で物を仕入れて301万円で販売するなど)ことに対して、HPの作成など自分の能力を売るような業態ではなかなか売上を作りにくいと思います。
どちらも売上で判断されると少し不平等なように感じます。
とはいえ、まだこれは改正案ですので、今後の動きに注目する必要があるでしょう。
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