2022年10月24日

その支払、修繕費でOK?

私は、温泉巡りが趣味なのですが、今週末に下呂にある『濁河温泉』に日帰りで行ってこようと考えています。
濁河温泉は日本で一番標高が高いところにある温泉街らしく、温泉宿のホームページを見ていたところ、『11月以降は4WDの車はスタッドレスで、それ以外の車はスタッドレスにチェーンを巻いて必ず来てください』との案内がのっていました。
当事務所も岐阜にありますので、冬季はスタッドレスを付けますが、今までチェーンを付けたことが無いため、冬に行くにはハードルが高いなあと思いました。
雪が降り始める前に行ってこようと思います。

さて、車のスタッドレスタイヤを購入した場合の経理処理ですが、どのようにすればよいでしょうか?
一括して修繕費?それとも車両として処理?
処理方法について解説していきます。

資本的支出と修繕費について

税務上、一般的に『修繕』と呼ばれるものでも、ものによっては、税務上『修繕費』とはならず、『資本的支出』として取り扱うものがあります。
『修繕費』は、支払った時の一括の費用として計上できるものですが、『資本的支出』は資産と同様と取り扱うため、支払った時に一括で費用として計上することが出来ず、減価償却を行って、何年間かかけて費用としていく方法がとられます。
修繕は名前も一般的なものですが、資本的支出という言葉はほとんどの方が聞きなれない言葉だと思います。

『資本的支出』とは、固定資産の修理、改良等のために費用を支出したとき、その支出により、資産の価値や耐用年数が増加したと認められるものを言います。

なんだか、難しい言葉が並んでいますね。
言い換えると

その支払によって、『資産の価値がアップした』または『使える期間が延びた』

ものを資本的支出として取り扱うと定められています。
そのような支出は一括で費用計上することはできず、資産計上し、減価償却を行う必要があります。

資本的支出と修繕費はどうやって区別する?

言葉では、前述の様に資本的支出と修繕費を区別していますが、実際に実務上の話となると曖昧なものが多いです。
車で言うと、先ほどのスタッドレスタイヤをつけた場合や、カーナビ・ドライブレコーダーを新しく付けた場合などです。
そこで、税法上は曖昧なものについて、資本的支出か修繕費かを判断するためのフローチャートを用意しています。ここで、フローチャートを見ていきましょう。

第一段階 支出額が20万円未満かまたは周期が3年未満か?

その支払額が20万円未満である場合、またはおおむね3年周期で行われるものである場合、資本的支出に該当するものであっても、修繕費として処理することができます。

第二段階 明らかに資本的支出に該当するものか?

明らかに資本的支出に該当するものとして、通達上で下記の4つを明らかにしています。
① 建物の避難階段の取り付け等物理的に付加されたものが明らかな部分に対応する額
② 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した額
③ 機械の部品を特に品質又は性能の良いものに取り換えた場合の通常の取り換えに必要な額を超える部分の金額
④ ソフトウェアのプログラム修正等が新たな機能の追加、機能の向上等に該当するときのその修正額

ここでは、『物理的に新しいものが付いている』、『用途変更のための費用』、『より高品質な部品への取り換え』、『ソフトの機能の追加や向上』に該当するものは、資本的支出となると例示しています。

第三段階 通常の維持管理のものか、き損したものを現状に復するためのものか?

第一段階、第二段階でも資本的支出か修繕費かわからない場合、次に通常の維持管理のためか、壊れたものを直すためかで判断します。建物の壁の塗り替えなど(前の塗料と同程度のものを使用したものに限ります)通常の維持管理のものは修繕費となります。

第四段階 60万円未満か又は前期末取得価額の10%以下か?

第一~第三段階を経てもなお、わからないものについては、金額が60万円未満である場合や、前期末取得価額(元々の購入金額と過去のその資産の資本的支出の金額の合計をいいます)の10%以下である場合には修繕費としてOKとなっています。

以上がおおまかなフローチャートとなっています。本当はさらにフローチャートが続くのですが、長くなってしまいますので、ここでは割愛します。
フローチャートをまとめると下記の通りです。

まとめ

このように、修繕費か資本的支出かで様々なルールがあります。
修理っぽいから修繕費にしてしまおうと安易に考えずに、一度立ち止まって考えることが必要となります。
なお、スタッドレスタイヤについての答えは、金額が20万円未満の場合は修繕費として計上可能、20万円以上の場合は、雪道を走ることができる機能が追加されたと考えられますので、資本的支出として処理することが妥当と考えられます。


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